70歳を間近に控え、何か言い忘れたことがありそうな気がします。これからは不定期ですが思うところを綴ってみますのでよろしくお願いします。第1回目は、少し長いです。
売価の上げられない日本で、今、売価を上げられる企業と上げられない企業があります。両者の違いは何でしょうか?
高くて売れる 北陸発・高い企業「能作」さん
10月20日付日本経済新聞の「高くて売れる、北陸発・高い企業」という特集で、能作さんが取り上げられていました。
能作社の出店は、世界中の一流店から優良テナントとして引く手あまたです。
商品の売価については原材料やコストを積算するのではないそうです。この商品の価値ならお客様はいくらであれば購入していただけるかという能作社長の感性で決められているとのこと。
鋳物作り体験も錫婚式も、すべての活動は能作の価値を上げることに繋がり、購入のきっかけをつくるために行われています。
先日、オーバードホールで作家平野啓一郎氏の恋愛小説「マチネの終わりに」をテーマとしたコンサートを観ました。プロギタリストの大萩康司氏が演奏で能作さんの鈴をギターネックにぶら下げて使われて、大萩氏がそれを紹介すると会場は大いに沸きました。商品の価値が話題となり別のシーンで扱われ、そのことがまた商品の価値を上げるというブランドのスパイラルアップが起きています。
クォーツショック
ところで、我が家の寝室では40年近く前に購入したディズニーのクォーツ式の壁時計が、今でも現役で動いています。当時の幼い子供の為に求めたもので、時計盤はミッキーが厚紙で繰りぬかれており安価で、ここまで動き続けるとは驚きです。
1970年代にセイコー社はクォーツの特許を公開します。クォーツショックによって、スイスの機械式の時計は壊滅的打撃を受けアメリカの時計産業は完全消滅に至ります。クォーツ時計は一時世界を制覇するのですが、やがて自らの価格の安さにより勢いを失います。
一方、スイスの機械式時計産業は、こだわりをもったデザインや、メカニズム、ものづくりの思想を楽しむという付加価値により蘇り、ラグジュアリーブランドとして成長しているのです。
ハイクオリティー高付加価値へ
日本はかつて人口増大、加工貿易推進の立場で、ボリュームコストダウンを重ね急成長しました。ところが現在は人口減少、生産拠点の海外移転によって残念ながらボリュームコストダウンは叶わず、衰退の道を歩んでいます。価格の安さで勢いを失ったのはクォーツ時計だけではありません。日本は過去の栄光の記憶から脱して、ボリュームコストダウンからハイクオリティー高付加価値に移行すべきときではないでしょうか。
高い価値には、それにふさわしい売価をつけたいものです。